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PCWRC第3戦は、タンゴで知られる情熱の国、南アメリカ大陸南部のアルゼンチンで開催される。
SPRTの両輪のひとつ、ポッサム・ボーンの突然の他界から1週間、チームは深い悲しみに包まれていたが、「グループN車両での世界タイトルを是が非ともスバルに」という故ポッサムの遺志を引き継ぎ、予定通りこのアルゼンチン戦への参加を実行することとなった。
SPRT代表の伊藤健は、「ポッサムを失ったことは、スバルのみならず、ラリー界にとって大きな損失だ。とても残念で、悲しみは絶えることがない。しかし、我々が彼の遺志に報いるためには、共に誓ったプロダクションカー世界チャンピオンの獲得に向け、全力を尽くすこと以外にない」と語っている。
ポッサムのPCWRCのパーマネントカーナンバー「62」とニックネームの由来である「フクロネズミ」のマスコットをデザインした追悼ステッカーをラリーカーに貼り、チームはサービスパークのラ・カンブルに現れた。すると、同じスバルファミリーのパトリック・リチャード(カナダ)からステッカー貼付が希望され、また、スバルワークスチームであるスバルワールドラリーチームからも同様の申し出を受けた。そうして、今年のアルゼンチンラリーを走る4台のインプレッサにポッサムステッカーが貼られることとなった。
アルゼンチンラリーは、首都ブエノスアイレスに次ぐアルゼンチン第2の都市コルドバに程近いリゾート地、カルロスパスにヘッドクォーターが置かれている。南半球のため季節は秋ながら、朝晩は10℃以下に冷え込むものの日中の気温は20℃前後と温暖である。本年からFIAの指導によってラリーのコンパクト化が図られ、有名な高地コース「エル・コンドル」周辺でのステージは廃止されたが、昨年までにないステージも新たに組み込まれ、変わりやすい天候と高速で岩がちなラフロードという特徴は変わらない。ウォータースプラッシュが多いことでも知られている。
改造範囲が制限されるため市販車両のキャラクターに近いグループN車両にとっては、ツイスティなコースではトルクを路面に確実に伝え、高速セクションでは短時間にスピードを乗せることが肝心である。そして、荒れた路面などでクルマを壊さないように走る冷静さがドライバーには求められる。このアルゼンチンは、ラフロードを得意とする新井敏弘に向いていると言えるが、昨年はジャンプ後の着地でサスペンションを破損して優勝を逃しているため、油断は禁物だ。
8日に行われたシェイクダウンでは用意された4kmのステージの路面状況が悪く、新井は早々に走行を取りやめている。
「シェイクダウンはWRカーが走った後なので、路面にはわだちがつき、下から岩がごろごろでてきて、とても走れたものじゃなかったです。無理してスタート前にクルマを壊したら困りますしね。アルゼンチンに来てから1回プライベートテストを行っています。コースは入念にレッキしていますし、クルマをいたわるところも良くわかっています。今年のコースは、概して言うとサファリのように速く、アクロポリスほど荒れている、という感じです。気は抜けませんね。もちろん優勝したいですが、まずはチャンピオンシップポイントを確実に取ることが先決です。」
今回のアルゼンチンラリーにエントリーしているPCWRC車は総勢16台。スバルファミリーのスティグ・プロンキストとマーチン・ロウはエントリーしておらず、新井とリチャードの2台がインプレッサだ。昨年のPCWRCチャンピオンのカラムジット・シン(マレーシア)、地元のマルコス・リガート、過去2戦でポイントを取っているフェレイラやアル・ワハイビなどが主なライバルとなる。中でもリガートは、地元サポーターの情熱的な歓声に後押しされており、最大の強敵だといえる。
8日夜にカルロスパス近くの特設会場で行われた2台併走のスペシャルステージでは、リガートは新井と同組出走。コースを知りぬいた有利はあるものの、2度走行、合計6kmのコースで、新井に7秒差をつけてPCWRCのリーディングポジションを獲得している。
スバルプロダクションラリーチーム(SPRT)には、ニュージーランドのポッサム・ボーンモータースポーツから3名のスタッフが新井のサポートのため参加している。一人はチーフクラスのメカニックで、ポッサムの積年の技術的ノウハウを新井のために役立てるため、ポッサムの葬儀後すぐにニュージーランドを発ってアルゼンチン入りしている。
アルゼンチンラリーの本格的コンペティションは、現地9日朝からスタートする。
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