2005年FIAプロダクションカー世界ラリー選手権(PCWRC)開幕戦スウェディッシュ・ラリーは、2月11日、レグ1が行われ、新型SUBARUインプレッサWRX
STi spec Cを駆ったSUBARU勢がPCWRC 1-2-3位を独占した他、グループNの総合順位でもトップを獲得するなど、新型車が早くもその威力を見せつけた。PCWRCでは、新井敏弘を筆頭に、マーク・ヒギンズ、アキ・テイスコネンが、SUBARUインプレッサspec
Cの国際イベントのデビュー戦でマシンの強さを余すことなく披露。全20SS中、7ステージが終わった時点では、ファビオ・フリジエロも5位につけるなど、SUBARU勢が、上位のほとんどを占めた。また、PCWRCエントリー外でもSUBARU勢はラリーを席巻。中でもユッカ・ケトマキやノルウェーのアンダース・グロンダルは、地の利を生かしての速さを見せつけた。
この日、午前中には3 SS・52kmのステージが設定。午後にはこの3本を再走した後、サービスパークの置かれるハグフォースに戻り、夕方にはスーパーSSが行われた。
快晴となったこの日、PCWRC勢最上位ゼッケンの新井が、SUBARU勢の先頭を切ってスタート。気温はステージの路面が凍るに十分足りるほどの寒さとなったため、心配されていた轍はそれほどひどい状態にはならずに済んだ。
SS1で新井は、2番手のマーク・ヒギンズに12秒の大差をつけて、余裕のステージウィン。このオープニングステージでは、スタート直後の4km地点で、アキ・テイスコネンがフロントをヒット。マシンはすぐに動き出したが、数秒のタイムロスとなってしまった。またステージの終わりには、再び右側をヒットし、さらにタイムロス。しかし、それほど深刻なトラブルとはならなかった。
前半3SSでは、何のトラブルも伝えられなかったファビオ・フリジエロだったが、コンディションに対してサスペンションが固すぎたため、日中のサービスでソフト方向に調整を行った。
ヨアキム・ロマンは、堅実な滑り出しを見せていたが、SS3で、エンジンが故障、リタイアとなってしまった。地元ノルウェー出身のロマンにとっては、苦いPCWRCシーズンの幕開けだったが、次にノミネートしているPCWRC第3戦キプロス・ラリーで挽回を目指す。
新井とヒギンズは、SS2、SS3でもペースを維持し、両ステージでも1-2フィニッシュ。ステージはどんどんと南下していくため、それに従い路面の轍は深くなり、SS1よりもややソフトなコンディションとなった。
このSS2,3では、タイヤ本数が限定されるPCWRC勢は何よりもパンクを恐れていたため、全体的にペースダウン。しかし、シリーズ内コンペティターでは、早くも波乱が起きていた。三菱のトップドライバーの一人、奴田原文雄がSS1でリタイア。続くステージでは、スペインのサビエ・ポンスが、マシンをコーナーの外側にヒットし、ホイール破損、リタイアとなっている。奴田原とポンスは、今年から一新されたスーパーラリーシステムを適用し、明日は再スタートする見込み。未走行のステージに関しては、ベストタイムに5分のペナルティが加算されたタイムが与えられた上で、総合順位には残ることになる。今年、PCWRCにエントリーした21人のうち、今回のスウェディッシュに参戦してきたのは9人。ここまでで、ヨアキム・ロマンがイベントから完全にリタイアしたため、残るPCWRC勢は、ラリーを走り切れば、少なくとも1ポイントが獲得できる見通しとなった!
昼のサービスでは、午後の再走ループを前に、まばゆい日差しの下つかのまの休息を楽しんだ。午前中のコンディションには誰もが満足だったが、命取りになりかねない轍と石には非常な慎重を保っていた。PCWRC勢のトップ3、新井、ヒギンズ、テイスコネンは、午後のステージに向けて、マシンへの修復の必要は特になく、ルーティンの作業と共にタイヤ交換を行うのみのサービスワークとなった。
午後の走行でもトラブルなく走行を続けていた新井だったが、最終ステージ、ハグフォースのスーパーSSでは、大ジャンプをクリアした直後から、パワーステアリングが90%効かないアクシデントに見舞われた。豪快なジャンプで、このステージはグループNベストタイムで走り終えた新井は、ここでのタイムロスはなく、直後のサービスでトラブルの修復を行った。新井は「非常に面白い初日となった。トップに立てて、本当にうれしい。総合的にはハッピーな出来。ステージウィンを獲るのは、いつでも気持ちのいいものだね」
ペースダウンこそしないが、限界まで攻め過ぎもせずペースを維持した、トップラン製作のSUBARUインプレッサspec
Cを駆るマーク・ヒギンズは、堅実に走り切り、PCWRC 2位で初日を終えた。「マシンは、最高の出来で大満足。本当にドライブがしやすくて、競技を満喫している」とヒギンズは、興奮をストレートに表した。「これまでの懸命な作業を棒にふってしまう様な、無茶なプッシュはするべきではないと気がついたんだ。そうしたら、2位。適切なペースを保つことが、何にも勝るということだね」SS4ではホイールを破損したヒギンズだが、タイヤそのものは無事を保ち、その後のロードセクションでタイヤ交換、タイムロスを防ぐことができた。
その他PCWRC勢以外では、アンダース・グロンダルが、プロドライブ製作の新型SUBARUインプレッサspec
Cで参戦し、この日を通じて速さを見せつけた。若手ドライバーのグロンダルは、午前中のステージを終えた時点でグループN9位。上位との差も1分以下に抑えるなど、これまでノルウェー国内選手権しか経験のなかったドライバーとしては、大健闘を見せた。この日の終わりには、さらに順位を上げ、PCWRC
3位のアキ・テイスコネンに1分以下の差まで追い上げた。国際イベント初参戦のグロンダルには、若き日のペター・ソルベルグの面影さえも見えるようだ。
午後の再走ステージでは、ステージのコンディションは、さらに轍が深くなったため、ドライバーはドライビングスタイルを全開ドリフトから、押さえつけるような慎重な走行に変えなくてはならなかった。観戦するにはドリフトは最高だが、しかしそれには高いリスクがつきまとう。轍から少しそれれば復帰は至難の業、弾き出されれば、たちまちコースアウトとなってしまうのだ。
午後は、比較的に力を抜いて臨んだアキ・テイスコネンだが、マーク・ヒギンズとの差をにらみながら、ややペースアップ。よもや2位奪取というところだったが、ギアボックスにトラブルが発生。最終サービスで、修復に挑んだ。
特に目立ったトラブルは伝えられなかったファビオ・フリジエロだが、高速コーナーでのハンドリングに不安定を感じたようだ。「ターンインは問題ないが、コーナーではマシンがアンダーになる傾向がある」フリジエロはエンジニアと相談し、明日のステージでは、サスペンションをややソフトに調整してトラブルの解消を試みる。しかし、その他安定した部分には満足を見せ、ステージでも軽やかな走りを披露した。
全体的に、午後のセクションでは、ステージはそれほどソフトにはならなかった。寒さが残ったまま夜に突入、そして、冷え込みは朝まで続くと見られる。明日も、寒い一日が予測されている。
グループN全体では、トミ・マキネン・レーシングのプリペアによるSUBARUインプレッサspec
Cで参戦しているユッカ・カトマキがPCWRC勢を抑えてのトップを堅守、グループNトップ4のうち3台をSUBARUインプレッサspec
Cが占めた。PCWRC勢でもトップ3をSUBARU勢が独占。2005年PCWRCの開幕を、最高の滑り出しで飾った。
STI グループNプロジェクトマネージャー:ジョージ・ドナルドソン
「イベント初日に、グループN総合でもPCWRCでも、トップ3をSUBARUインプレッサspec
Cが独占するという、素晴らしい結果となった。そして、マシンが備えているパフォーマンスを存分に見せつけることができたことが、何より喜ばしい。明日も、この調子を続けていきたい」
明日は、このラリーの中でも、最も有名な難関ステージ、フレドリクスベルグが控えている。高速ロングストレートのセクションでは、ドライビングの真価が問われる。また、毎年何人かのドライバーがリタイアを喫する、タイトでツイスティなセクションも待ち受ける。すべてのコンペティターにとっての、真剣勝負となりそうだ。
季節外れの温暖な気候のため、高速コーナーを抜ける際に当て込むお馴染みの雪壁を今年は見ることができない。しかし、コンペティターは、スノー&アイスタイヤで、いかにグリップを得るかという、天候に関連する問題にさらに立ち向かうことになる。